>>かおりちゃんの信行日記

第18回 御尊像は何故黒い?の巻

温かい心地よい季節になってきたそんなある日の事。
お友達のともみちゃんがかおりちゃんの家に遊びに来ました。

「あ、かおりちゃんの所の仏様、温かくなったから布団を取ったんだね」
「布団じゃないよ。お綿って言うんだよ」

ともみちゃんは以前、御尊像のお綿についてかおりちゃんに質問した事があります。

「こんなに大切にされてる仏様なのにどうしてこの仏様は真っ黒なの?どうせなら顔を肌色に塗ってあげるとか、洋服もきれいな色の物を着せてあげるとかすればいいのに」
「ホントだね。今までそんなこと考えた事なかった」

かおりちゃんは御尊像のお顔が肌色で、きれいな色の御衣をまとわれている姿を想像しました。
きれいな御尊像だと、もっとお給仕に励めるんじゃないかなと思いました。

ともみちゃんが帰った後、かおりちゃんは早速おばあちゃんの所に行きました。

「ねぇ、おばあちゃん。どうして御尊像は黒いの?ちゃんと肌色とかきれいな色の御衣とかにしてあげれば、もっと一生懸命お給仕出来るようになるんじゃないかなぁ」
かおりちゃんの言葉を聞いて、おばあちゃんは本当にそうかもねと小さく笑います。

「でもね、御尊像が黒いお姿をしてらっしゃるのはちゃんとした意味があるんだよ」
「どんな意味?」

「御尊像は本山宥清寺に伝わる【高祖御霊像】をモデルにして造られているんだよ。【高祖御霊像】は昔、日蓮聖人の御弟子の日法上人という方が刻まれて、日蓮聖人自らお題目をお示しになられたとても貴重な木造で、その像が造られた時はちゃんときれいに色が塗られていたそうなんだよ」

「どうしてその色も真似しなかったの?」
「開導聖人が本門佛立宗を開かれるまで七〇〇年近い歳月が経っていたし、ろうそくの煤やお線香の煙でだんだん色がくすんでしまい、古式ゆかしい趣のある色になったと言われているねぇ」
「こしきゆかしい?」
「昔ながらの上品さがある、ということだよ。開導聖人はそれも日蓮聖人の教えとしていただくべきだとされて、高祖御霊像にならって御尊像を黒くされたんだよ」
「ふーん。昔は色が付いていてきれいだったのかぁ」
「色が付いているのも確かにきれいだろうけど、でもね、おばあちゃんは黒い御尊像の方がきれいだと思うんだよ」
「どうして?かおりは色が付いている方がきれいだと思うなぁ」
「塗られていたきれいな色は今は残っていないけど、でもたくさんの方がたくさんお看経されたから今の黒い御尊像があるんじゃないかな?だからあれは【黒い】んじゃなくて、たくさんの人のお看経が作り出した色なんだとおばあちゃんは思うんだよ」
「ふーん」

かおりちゃんはおばあちゃんが言った言葉の意味を全部理解出来ませんでしたが、いつの日かかおりちゃんにも、今の御尊像の色がなによりもきれいな色なんだとわかる日が来るでしょう。

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