第23回 初詣は行っちゃダメの巻
新しい年が始まりました。せっかくのお正月だというのに、かおりちゃんはむくれた顔でこたつに入っています。
実はお友達から初詣に行こうと誘われたのですが、お母さんに行ってはダメだと怒られたからです。
「せっかく誘ってくれたのに、どうして行っちゃダメなのよ!」
「神社とか他のお寺とかに行ったらダメって昔から言ってるでしょ!」
「みんな行ってるのにどうしてかおりだけダメなの!」
「おやおや、何をそんなにむくれているんだい?」
かおりちゃんの声にびっくりしながらおばあちゃんが部屋に入ってきました。
「ねぇおばあちゃん。どうして本門佛立宗以外のお寺とか神社に行っちゃダメなの?」
おやおやこの子は……と呆れながら、おばあちゃんはかおりちゃんにも解るように説明してくれました。
「例えばかおりが不治の病にかかったとするよ。そしてその病気を治そうと『A』という薬と『B』という薬を飲むんだね。その薬を飲むことで気分は少し楽になるけれど、でも病気を完全に治すことが出来ないんだ。そんなある日『C』という薬ができた。この薬はその病気を完全に治すことが出来るけれども、他の薬と混ぜて飲んではいけない。
さぁ、かおりはどの薬を飲むかな?」
「当然『C』の薬だよ」
「そうだね。でもね、今のかおりは『C』の薬を飲みながら『A』の薬も飲もうとしているんだよ」
「えっ、どういうこと?」
「不治の病というのは【罪障】のこと。『A』と『B』は【神社や他のお寺】、『C』というのは【本門佛立宗】のことなんだよ」
【罪障】というのは魂の中にある悪いことを記録しているもので、これは御題目をお唱えしないと絶対に消えないものだとかおりちゃんはこの前勉強したところです。
「神社やお寺にお参りすると、今は良いことがあるかも知れない。
でもね、【罪障】が消えない限り砂山の上に家を建てているようなもので、いつか崩れる日がくるんだよ」
黙ってうつむくかおりちゃんに「それにね」と、おばあちゃんはお話を続けました。
「かおりは嘘をつくお友達は好きかい?」
「ううん。嫌い」
「御題目をお唱えして【罪障】を消滅できるようにとお願いしてるのに【罪障】を消滅できない神社や他のお寺にお参りするなんて、御宝前様に嘘をついているようなものじゃないかしら?」
かおりちゃんはハッとしました。
「そうだね。御宝前様に嘘をついているようなものだね」
お友達と一緒にどこかに行くのがすごく楽しみだったけど、でもそれは初詣じゃなくてもできるんだと気づきました。
「うん、よくわかった。ごめんね」
「おばあちゃんより謝らないといけない人がいるんじゃないかい?」
かおりちゃんはちょっと恥ずかしそうにお母さんの方を見ました。
「お母さん、ごめんね」
「いいえ、どういたしまして」
おかあさんはにっこり笑いって言いました。
それを見ておばあちゃんもにっこりと笑います。
「お正月早々、賢い子になって今年もかおりにとっていい年になりそうだね」
おばあちゃんが言ったのを聞いて、お母さんもかおりちゃんも笑いました。
今年も一年、みんなにとっていい年でありますようにと思ったかおりちゃんでした。