第25回 家とお寺での御看経の違いの巻
かおりちゃんのおばあちゃんは、毎日夕方になると御看経を始めます。
おばあちゃんが夕方の御看経を欠かしたのを、かおりちゃんは見たことがありませんでした。
「ねぇ、おばあちゃんはどうして毎日御看経するの?」
ある日、かおりちゃんはおばあちゃんに尋ねました。
「これだけ毎日お家で御看経してたら、お寺に行かなくてもいいんじゃないの?」
かおりちゃんの問い掛けに、おばあちゃんはにっこり笑いながら答えました。
「そんなことないよ。お家での御看経とお寺での御看経は全然違うんだよ」
「どう違うの?お唱えしてる御題目は全部一緒じゃない?」
「そうだねぇ、例えるとね、お家での御看経は水道の蛇口で、お寺の御看経はその水をためておく貯水場という感じかねぇ」
「水?」
かおりちゃんは首をひねりました。
「そうだよ。かおりは【功徳】ってわかるかな?」
「えーっと、お計らいをいただくために必要なもの…?」
かおりちゃんは答えに自信がなかったので、おばあちゃんの顔色を窺いました。
「そうよ、よく知ってるね」
おばあちゃんがそう言ってくれたので、ホッとしました。
「家族の生活で例えてみようか。みんなは水を使って生活しているよね。いつも蛇口を開ければ水が出てくるでしょ。でも貯水場に水が無かったら出て来ないよね。」
「うん。そうだよね。」
「家の蛇口を『お家での御看経』、貯水場が『お寺』で、清潔な水が『功徳』だとすると、どうなるかな?」
かおりちゃんは少し考えてから答えました。
「お水も、功徳も、毎日必要だもんね」
「その通りだよ。私たち信者はね、お寺の御宝前様から【功徳】をいただくんだよ。その為には、お寺に参詣して御看経することが大事だし、お家の御看経も大事なんだよ」
「だからおばあちゃんはお寺参詣も頑張ってるし、お家でも御看経を欠かさないんだね」
「それじゃあさ」と、かおりちゃんは少し身を乗り出して言いました。
「おばあちゃんが、お願いをすればたくさん功徳が出てくるんだね」
「そうだね。だから御看経を頑張るんだよ」
そう言って、おばあちゃんはいつものように御看経を始めたのでした。